「……良いんだよ別に。
それに俺、一目見たときからあいつが『狐』だってわかってたから、あいつに好意持ったこと無いし……。
ま、本当のことぶっちゃけると、『奥様候補』は、今日来るはずだった青子ちゃんでもよかったんだよね。
大らかだし。巨乳だし。
……それが何だ。
来たのは君と、テミスの刺客。
赤ずきんちゃんは危険を察知して逃げたのかな?」
「茶化さないで! ひど過ぎるこんなの……どうして玉野先輩は、そんなにもあなたを……」
「………さあね」
短く答えてから、銀司は玉野の言葉を思い出していた。
――私、まともな恋がしたかったのよ。
親戚や親から、「お前は美人だから、きっとまっとうなお嫁入りは出来ないね」って言われていたから。
でもだからって、中途半端な恋愛はしたくない……。
私を連れて行って、銀司。
どんなことにも協力するから……。
「――ふん。少し、黙ってな」
彼は小夜子と、心の中の玉野にそう言った。