昔からそうだったんだよと、玉野は銀司に話したことがある。
 
玉野の一族――『千年狐』の一族では、生まれた子が美しいと、狐の血が強いとみなされる。

そして一族は、その子をなるべく人から遠ざけようとした。


中には欲望のままに動く、残虐な心を持つ子もいた。

そうでない心優しい子もいた。

しかし総じて美しい子は、災いを呼ぶのだ。
 
本人が望んでいなくても、そうなってしまう。
 
その子のために、周囲の人間が狂っていく。
 
例えば玉藻前は、上皇を病にかけようとしたわけではない。

元々、人間と『妖怪』が交わること自体、

妖怪の血が今より濃かったその当時、とても難しいことだった。
 



しかし、逃げた彼女を追ってきたのは愛しい帝ではなく、



彼女を殺すための兵隊達だった。