銀司はしばらく沈黙してから、答えた。
「……あいつは、駄目なんだ。人間じゃない。『千年狐』の血を引いてる。
『九尾の狐』って言った方が分かりやすいか。
……聞いたことない?
大昔、帝を病気にさせたとかで、陰陽師だか何だかに封じられた妖怪、『玉藻前』」
玉藻前は、平安時代に絶世の美女と謳われ、上皇の寵愛を受けた。
正体が暴かれた後、彼女は八万以上の兵を相手に戦い、結局は破れて毒の石に変化した。
「もっと遡ると、古代中国の殷王朝を滅亡させた妲己だって、『千年狐』だった……。
他にもたくさん、歴史上の『傾国の美女』は、イコール『千年狐』だってケースは多いんだよ」