「嫌よ」
「大丈夫。死んだ後はちゃんと食べてあげるから」
「嫌よ」
「じゃあお嫁さんになってよ」
「嫌よ……って、……はあ? あの、何言って……」
「あれぇ……知らないの?
狼の種族はね、人間を伴侶にして生きてるんだよ。
吸血鬼が人間の血を吸ってそいつを吸血鬼にするだろ?
それと同じように、狼の種族が人間に噛み付くと、その人間を『家畜』みたいに従順に出来るんだよ。
……俺の母親もそうだった。
母さんは人間だったからな。
狼の血を持つ父親が、人間だった母親を使役してたんだ……」
人間という生き物がこの世界を構築してしまっている以上、
少数派の『化物』は、やはりそれに紛れて生きるしかない。
いつかフェニックスは世界を反転させると言っていたが、その時が来るまで、そうするしかない。