しかし、狼の姿の銀司は「コラ」と言っただけで、びくともしなかった。
「……先輩は、どうしてそんなに『テミス』が憎いの?
……さっきも、お兄ちゃんやエリアルがテミスだって分かった途端、酷い事した……!」
「何で憎いか?
……そんなの当たり前じゃん。
――俺の両親はあいつらに殺されたんだから。
……覚えてるよ俺。
だってその頃、小学生だったもん。
その後、奴等に拉致された上監禁されて、無理矢理洗脳されてたんだ。
毎日毎日……。
食事だって体に合わなくて、食わされる度に吐いてた。
地獄だったよ。
……それで、憎まずにいられる?」
「………」
「俺にとっては、君がテミスにいるってだけで既に同罪なんだ。
だから悪いけど、後でちゃんと死んでもらうよ」