散々叫んで喉が疲れた小夜子は、少しして大人しくなった。
聴覚の鋭い銀司は、拷問のような時間が過ぎた事にほっとした。
しかし、予想以上に耳鳴りと頭痛がした。
「……気が済んだ?」
「……どこ向かってんのよ」
「廃倉庫。海の近くだよ」
「海っ……そんな遠くまで!?」
「そういった場所じゃないと思いっきり戦えないじゃん」
「………っ」
「あ、物分かり良いね。助かるよ」
銀司は狼の姿になり、加速した。
一方、小夜子は不規則な上下の揺さぶりに酔いかけていた。
「それにしても……」
銀司は続けた。
「君さ、あいつの何がいいの? あいつ吸血鬼だろ?
どうせ、君の事エサとしか思ってないよ」
「……エリアルはそんな人じゃない」
「なるほど……恋仲なわけね」