銀司は一旦停止し、小夜子を真上に放り投げた。
「っうわああああ!」
場所は、ビルの真上だ。
何階建てかは分からない。
地面は遥か下。
人も車もミニチュアのように小さい。
あ、これ落ちたら本当に死ぬのかも……。
半ば覚悟した小夜子だったが、銀司がすぐにキャッチした。
「……!?」
おんぶになっていた。
「……ほら」
小夜子をお姫様だっこからおんぶに替えた銀司は、再び走り始めた。
だが、
「今のびっくりしたじゃんかあああああっ!」
力いっぱい遠慮なしに叫んだ。
「うわーんばかばか! 怖かったあああー!」
この後しばらく、小夜子の口と自分の耳の距離が近くなった銀司は、
余計に大きな声に悩まされる事になり、リクエスト通りにおんぶした事を後悔した。