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手首が握り潰されそうなほどの力で強引に手を引かれ、小夜子は抵抗すらできなかった。
しかし、
「嫌ーっ! お姫様だっこしないでよ!
下ろして自分で走るから!」
小夜子は精一杯、悪態を吐いて抵抗していた。
「無理に決まってんでしょこの高さ」
それをさらりと受け流す銀司は、小夜子を抱えたままビルを足場に走っていた。
「だったらせめて、おんぶ!」
「めんどい」
「おんぶ!」
「君、自分の立場分かってんの!?」
「どうせ人質でしょ!?」
「そうだよ! だから耳元でぎゃんぎゃん騒ぐな!」
「騒いでんのはそっちでしょうが人殺し!」
「るっさいな!」