「だからホントに待って、今良いものあげるからあっ!」
 

エリアルが無理矢理乙矢の頭を押さえ付け、

肌に――頸動脈の上に舌で触れた瞬間、乙矢がそう言った。
 
彼は涙目になりながら、胸ポケットをごそごそと漁り、エリアルの顔面にパックを叩き付けた。


A型RH+の血液の真空パックだった。


「もしやと思って持ってきたんだ……輸血にも使えるし。

破裂してなくてよかった」

「……盗品ですか? 献血センターとかの」

「れっきとした支給品だよ。

テミスの構成員や、吸血系の種族の協力者に無償で与えられる。

輸血してよし飲んでよしの100%人間の血だ」

「……遠慮しときます。何か添加物とか怖いし……」

「この状況下で何贅沢言ってやがるこのグルメめ……。

添加物ったって、酸化防止剤のビタミン程度しか入ってねえよどうせ。

……でも人間100%なのは誓って言える。

あれだろ、もしどっか別の種族の血が混入してたら、やばいもんな……」