広間へと向かう麻穂の背を見詰めながら僕は考えていた

伯父として、質問にどう答えればよかったのか

親からの愛をまともに受けてこなかった麻穂は、いろんな面でまだまだ未熟で危なっかしい

僕たちの世界、ヴァンパイアの理だと麻穂くらいの歳になると結婚する女が多い

しかし麻穂は人間で、僕たち夜の住人と同じに考えてしまってはいけない

すぐには答えがでなかったから思わずはぐらかしてしまったけれど、よかったのだろうか

麻穂のききわけの良いところは彼女の良いところのひとつだと思う

・・・こういう時に、とても感謝する

ホールからバルコニーへ、知人の男が出てきた

「よォ。透の坊ちゃんは今日も欠席なのか?」
「残念ながらね・・・」

透くん、か・・・。
彼も聞き分けの良さでは麻穂と並ぶが、最近は随分と素っ気ない

・・・理由に見当はついているけれど

「血を狙われてるのが手に取るようにわかるから居心地が悪い、って言っていたよ」
「そりゃ大変だ!元人間のヴァンパイアさまはいい匂いがするもんな。血もさぞかし絶品なんだろう?」

なんて歯に衣着せぬ言い方なんだろう

こいつのこういうところは苦手だ

僕はため息をついた

「知らないよ・・・飲んだことなんてないんだから」
「まぁそりゃそうか。まぁなんだ。いつか飲む機会があったら是非ともおこぼれに与りたいものだな」

そう言って奴は帰っていった

僕はバルコニーからケーキを食べる麻穂を見た

母親に似ず、純粋で小さくて可愛い、私の・・・