踊る?冗談じゃない!

近づきなんてしたら泣いていたのがバレてしまう

『音楽、こっちまで聞こえてきてないよ?』

「・・・いいんだよ」

よくない。

決してよくない。

リズム感なんてものは私には無い。

『だって・・・』

「メヌエット?ガボット?それともワルツ?」

伯父さんはさっと私の手をとり、もう片方は私の腰にまわした
必然的に近くなる距離に思わず俯く

「・・・麻穂?」

『わがままばっかりでごめんなさい。もう子供じゃないのに・・・』

伯父は何を思うだろう

鉛のような沈黙が訪れた

あぁ、私ってばかだ

わがままも愚痴もわがままも言わなきゃいいのに、なぜ人に伝えたくなるんだろう

こんなんだからお兄ちゃんに嫌われるんだよな

その考えと空気を変えようと 私は重い足を引き摺るようにワルツのステップを踏み始めた

伯父さんは何も言わずに優しくリードしてくれる

そうやって踊っていても、いつまでたっても私の気持ちは快方に進まない

ため息混じりに伯父に話しかけた

『・・・こどもって、いつまでがこどもなのかな』

ぽつり、呟くように伯父さんは返した

「僕にとって麻穂は子供だよ。いつまでもね」

『・・・?それってどういうこと?』

顔を上げようとする

が、それは阻まれた

伯父さんの胸元に私の頬が押し付けられたから

「さぁ・・・どういうことだろうね・・・」

抱きしめられてると理解するのには、少し時間をかけてしまった