「透くん、麻穂に乱暴しないでくれるかな」

「・・・伯父さん」
『伯父さん!』


お兄ちゃんは伯父さんを見れば居心地悪そうに 足早に去っていった


せっかく会えたのに
名残惜しくその背中を見詰めていると伯父さんが私の頭を撫でた


「きにすることないよ、麻穂。
 透くんは少し寝不足みたいだからね、そっとしておいてあげよう」

『うん、わかってる』


わかってる


わかってはいるけれど
納得はしてない


少し前からお兄ちゃんは書庫に閉じこもるようになっていた

年齢にそぐわないほど頭脳明晰な兄

ひきかえ私は勉強嫌いのバカ

小さい頃からその差は歴然

でも、ずっと一緒にいた

なんでも知ってるお兄ちゃんは私の憧れで、尊敬する大好きな人で

だけど、お兄ちゃんは最近私を避けている。


鈍臭いからかな、無知すぎるからかな
わがまま言いすぎるからかな、かまちょだからかな

思い当たる節がありすぎるから困るのだ


私と顔を合わせたくないから書庫にいるのだと、卑屈な私は考えている

伯父さんもまったく心配する素振りなんてないけど、実は心配なんだろうと思う

だってだって、伯父さんは私よりも出来のいいお兄ちゃんの方に期待してる気がするから・・・