がたがたと振動が身体を揺らす

ひとのこえがきこえる

おにいちゃん、おじさん、?

「・・・・・・・・・じゃあ椿嬢は何も教えてくれなかったんだね」
「あぁ。満足するまで吸っておいて、本当に、なんて奴だ・・・」
「仕方ないよ、前回くれた資料は役に立ったんだろう?気まぐれな椿嬢だから、それだけでも充分なんじゃない?」
「でもあれだけじゃわからないことが多くて成功するかどうかわからない、何よりあさへの負担が大きいんだ。もっと協力してもらわなければいけないんだ・・・・・・」

わたし・・・?

ふたりでなんのはなしをしているの・・・?

「麻穂の身体が最優先だけど、できるなら透くんも生きていていいんだからね」
「はは、それはなかなか難しそうだな・・・できたらそうするさ」

『ちがうよ・・・おにーちゃんゆうせん、だよ?』
「「!?!?」」

未だぼやけた視界そのままで私は言う

しかし起きた当初よりは思考回路はマシで、少しずつ聞いた内容を整理することができていた

「あさ・・・起きていたのか・・・?」

『私なんかより、おにぃちゃんが、いいこだし、できたこだから、お兄ちゃんが私より大切・・・だよ?』

起き上がろうとしたら途中で力が抜けて椅子から転がり落ちた

あぁ私は車で寝ていたのか

落ちた衝撃でクリアになる視界のおかげで、ようやく自分の状況を確認できた

よろけながら座り直すと右隣に座る伯父さんが心配そうに私の顔を覗き込んだ

「大丈夫かい?・・・それにしても麻穂、優先とか大切とか、何の話なの?」

伯父さんが不思議そうに私に言う

不思議なのはこっちなのに

『え・・・だってさっき、お兄ちゃんが言ってたよ・・・?』

「透くんが?おかしいな、透くんは今日は来てなかったはずだけど?」

夢でも見たの?と伯父さんは私の頭を撫でた

いや、夢じゃない・・・はず??

車内を見渡すもおにいちゃんの姿はない

どういうことかさっぱりわからない

「麻穂か透くんか、どちらかなんて選べるはずないよ。夢に見るほど心配だったの?」

伯父さんは悲しげな表情で私を抱きしめた

今度は私が伯父さんの頭を撫でる

そして出来る限り優しい声色で伯父さんに言う

『何も心配なんてないよ。伯父さんはやさしくて、お兄ちゃんは少し上手くいってないけどユキノがいてくれるし、全然大丈夫なの。幸せだよ』