「おっと・・・怖がらせちまったかな?
こんくらいでびくびくするなんて情ねぇな、お姫様?」
くつくつと男は笑う
嘲笑のようにさえ思えるその笑いに苛立ち、私は肩に置かれた男の手を振り払った
『私はお姫様ではないですよ』
おっとっと、なんて男はおどけて言う
「いや、あんたは間違いなく姫だよ。
何不自由なく、何の不安もなく、優しい陽の光の下で笑っていられるんだからな。」
少し引っかかる言い方
もやっとしながらも私はこたえる
『陽の光は苦手ですよ、最近は特に。眩しいし、すぐ日に焼けるし・・・そしたら皮がむけるし・・・』
それが理由で進学先を通信にしたのだ
仲のいい友達と一緒に体育祭も学園祭もしたかったが、泣く泣く諦めたのだ
男はその答えに驚いたようで目を丸くした
「お前・・・それはいつからだ?」
『えと、一年前くらい?』
面白いものみィつけた
そんなことを言いたげに爛々とした目で男は私に言う
「ふは、そりゃあ大変だな・・・、
おい麻穂、透の坊っちゃんにはあまり近づいてくれるなよ。」
『それはどうして?』
「どうしてってそりゃあ・・・なぁ?
自分から言ってあげりゃあいいんじゃねぇの?いつまで隠れてるつもりだよ、透の坊っちゃん?」