「萌、こっち」

「えっ、」


グッと手を引かれたまま繋がれる手。

それだけで何故かドキドキして、自分でも分からないぐらいおかしい。


久々に会ったのにこんな感情までに至るだなんて思ってもみなかった。


「萌、映画みねぇ?」

「映画?」

「そう。ほら今から上映のやつ何個かある」


丁度、映画館の前で佐々木君が看板を見上げた。

あぁ…映画。

そう言えば、晴馬君に誘われてから行ってないな。

ギクシャクした関係で、そんな事も忘れてた。


「なぁ、萌。何みたい?あ、この刑事映画、すげぇ人気だって。これする?」


それは…

晴馬君と約束したから。

あれ?おかしいよね、あたし。

なんで晴馬君と見に行こうとしてんだろ。

別に佐々木君とでもいいのに。

むしろ佐々木君とのほうがいいのに。


でも約束しちゃったから…


「うーん…こっちにしよう。って、あ、恋愛ものだ。んー…っと他は、」

「いいよ。萌が見たいやつで。じゃ行こう」


佐々木君のペースに乗せられて簡単に入ったものの、どうしよう。

なんとなく言ってしまった恋愛ものの映画を佐々木君と見る羽目になってしまって。


よく考えたらやっぱり刑事ものを見ればよかったと思った。

一番後ろの席から眺める光景は、女のグループ。そしてカップル同士が何組が居るのが見える。


もう入ってしまったからどうしていいのか分からないけど、自棄にドキドキする。