「ちょ、ちょっと…」


グッと表情を崩した晴馬君の目つきに思わず視線を逸らす。

手を晴馬君の胸もとに当て、押すにも壁を支える力が強すぎて動かない。

それどころかグッと更に迫って来た晴馬君はあたしの口元を反対側の空いてる手で塞いだ。


「…ん、」


え、なに?

なんなの?

塞がれている所為で、声が出ないし口も開く事しか出来ない。

そして晴馬君の唇がグッとあたしに寄った。


「…キスしてとせがんで喜んで浮かれてる安い女は嫌い。俺が誰にでも靡くと思ってんのかよ。俺、今は好きな奴としかしねーから。だから俺に関わんねーでくれる?そんなせがんでも寝たりもキスもしない」



え、な、なんなの?

何がどうなってどうなった?

真剣に耳元で囁いて来る晴馬くんの吐息がかかる。

何が何だか分からないまま目を泳がしてると、晴馬君はフッと鼻で笑ってあたしの口元から手を離した。


「え、なに?」


戸惑った所為か額に汗が滲む。

それを手で拭うと晴馬君は、もう一度フッと笑った。


「昨日のシチュエーションしただけ」

「え、えぇ?シチュエーションって?」

「キスしてねぇって言う、それな。つか何でお前が赤くなってんの?」

「え、な、なってないし」


ヤバい。

何でか分かんないけどドキッとした。

晴馬君にドキっとするなんて…