「萌が俺の言う事聞いたら離す」
「ちょ、もうやめてよ。晴馬君、離して」
グッと反対側の手で晴馬君の腕を掴んだ。
だけどあまりの強さに晴馬くんの腕は離れず、むしろ痛い。
それに晴馬君は何故か怒ってる。
怒りたのはあたしなのに。
「だから言ってんだろ。俺の言う事聞いたら離すって」
「晴馬君って、いつもそうだよ」
「は?」
「なんで自分の意見ばっか押し付けんの?好きだ好きだって言って来るわりに自分だって他の女とキスしてんじゃん」
「は?俺がいつしたよ」
「昨日だよ!!昨日、裏庭でしてたじゃん!!なのにあたしに逢着しないでよ!!」
「してねーけど」
「はい?してたでしょ?あたし見たんだから」
「だからしてねーって、」
「な、なんで逆ギレ?」
「してねーって言ってんのに聞かねぇからだろ。つか逆ギレしてんのはお前だろうが」
「佐々木君はそんな事しない」
「はぁ?」
「晴馬君みたいにチャラチャラしない。女にだらしなくなんかない。優しいし気を使ってくれるし、髪も黒くて好青年だよ」
「つか、」
ドンっと鈍い音が耳を掠めた瞬間、晴馬君に力づくで壁に押しやられていた。
昨日見た、壁ドンっやつが今、あたしにもされてる訳で、
「お前、俺に喧嘩うってんの?」
そう言った目つきが今までで見た初めての晴馬君だった。