「じゃ、好きな奴は?」

「そっちも居ないです…」


ちょっとガックリきてしまった。

目の前の佐々木君に対して、ずっと憧れだったの!なんて言えるわけがない。

もっと簡単に口が開けばどんなに楽なんだろうって思ったけど…


「わーマジ?良かったぁ」

「え?」

「いや、ほら。彼氏とか好きな奴居たら俺と会うの迷惑だろ?」

「あ、そっか」


やっぱ佐々木君は気を使える人だった。

あたしを馬鹿にしない。

あたしをおちょくったりしない。

あたしを虐めない。


「だったらこれからも会える?」

「うん。いいよ」

「良かった。正直、萌に男居たらどーしようって思っててさ」

「え、なんで?」

「だってショック受けるから」

「え?」


それってどー言う意味だろう。

どう読み取っていいのか分かんない。

そんな風に言われたら、なんか勘違いしちゃうよ…


「って、そんなビックリした顔すんなよ」

「あ、うん。ごめん、」

「萌、学校楽しい?」

「うん。佐々木君は?」

「んー…まぁまぁ」

「そっか」


南条なんてロクな奴いねーよ。

晴馬君が言ってた言葉がまた浮かんだ。


何を根拠にそんな事、言ってんの?

やっぱ佐々木君はあの時と変わらず、良い人。