「萌、全然かわってねぇよな」
喫茶店に入ってすぐ、佐々木君は笑みを作りながら視線を向ける。
「そ、そうかな?」
「うーん…でもあん時よりすげぇ可愛くなってる」
「え、もうやめてよ。恥ずかしいじゃん」
「ほら、そー言うところ変わってねー…」
クスクス笑う佐々木君は運ばれて来たアイス珈琲にシロップを2つも入れた。
ストローでクルクル回す佐々木君は物凄く甘党だった。
佐々木君が甘党なのを知らなかったから、何か一つ発見した気分になった。
「佐々木君って、甘党だったんだ」
「うん?そーそー俺、甘いの好き。萌も好きだろ?」
「うん、好きだよ」
「じゃあ、さぁー…今度ケーキ食べに行かね?萌、好きだろ?」
「うん。佐々木君、よくそんな事覚えてるね」
「萌の事なら何でも覚えてるよ。女の友達って萌しか居なかったからな」
「あたしもだよ」
「なぁ、萌。今、彼氏いんの?」
「え、彼氏?」
「うん。いる?」
ヤバい。
なんでだろう。一瞬、晴馬君の事が頭を過った。
なんで晴馬君なんかが頭に浮かんでくるんだろう。
あんな女ったらしの事なんか…
「え、居ないよー…」
だってこんな風に佐々木君に会っちゃうと、もう作れそうにもないです。