「アンタさぁー…すっごい芹奈困ってたけど」


暫くして教室に入って来た麻友ちゃんがため息交じりに呟いた。

読んでいたファッション雑誌に目を向けていると、それをスッと麻友ちゃんが閉じる。


「…ちょっと麻友ちゃんっ、」

「あたしの話、聞きなよ」


あたしの机に頬杖をつきグッと覗き込むように視線を送ってくる麻友ちゃんに頬を膨らませる。


「何?麻友ちゃん…」

「あんたの訳の分からない会話に困ってた」

「……」

「あたしが全部詳しく説明してやったけどさ。ほら言うこっちゃない」

「……」

「佐々木、いい奴じゃないよ。晴馬が言うくらいだから」

「なんでっ?」

「だって晴馬がそう言ったんでしょ?」

「違うよ?佐々木君じゃなくて南条がだよ?」

「どっちも同じじゃん。晴馬、顏広いから辞めたら?」

「なんで麻友ちゃんまでそんな事言うの?晴馬君の味方な訳?」

「だって、あたし佐々木の事、好きじゃないわ。あの俺様的な?」

「それだったら晴馬君もでしょ?晴馬君、あたしに意地悪だし」

「意地悪ねぇ…でも昨日教えてもらったんでしょ?芹奈が言ってたよ」

「うん…」

「じゃ、感謝しろよ。晴馬、いつもと違う感じで参ってたよ、アンタの所為で」

「…っ、」


それは分かってる。

昨日の事は物凄く感謝してる。

じゃなかったら、あたしはあのままずっと学校に居て永遠と帰れない所だったから。


だから帰り際に晴馬君にもう一度、お礼を言おうと思ってたのに――…