「えっ⁉︎」


「もういいから、座って食べようよ」


由加里が、私の手を掴んで引っ張った。


「でも__」と口ごもりながらも、仕方なく席につく。


「諦めたとかじゃなくてさ、私も真帆と一緒に合格するには、無理しなくちゃいけない。真帆にまた辛い思いをさせちゃうし」


「そんなこと、そんなこと私は構わない。私は由加里と一緒に残りたい‼︎」


駄々をこねる子供のようだが、それは本心だ。


由加里だってそう思っているはずなのに、手のかかる子供を見守る母親のような、優しくて広い眼差しで私を見る。


「私だってそう。私だって真帆と勝ち残りたいけど、周りを見て」


そう言われて見回すと、食べ物を食べ物だとも思えないくらい、ただ口の中に突っ込むペアばかり。


中には喧嘩腰で食事をしているテーブルもある。


恐らく__食べることで体重差をつけ、相手を落とそうとしているんだ。


醜い争いがあちこちで行われている中、私と由加里はテーブルの上で手を握り合っていた。


それはとても、静かな時間。


「私もう、過食とは決別したいの。なにか嫌なことがあったら、いつも食べ物に逃げてた」


「私も同じ」


由加里の気持ちが、手に取るように分かる。