【二者択一】
水とパートナーを交互に見やる。
あの中で、地獄のようなレッスンをくぐり抜けてきた。
でもそれは、2人で協力したからだ。
それを自分だけ__?
「も、もう我慢できない‼︎」
誰かが叫び、ペットボトルの蓋を開けた。
飲まずにはいられないからだ。
それを合図に、誰もが蓋を勢いよくねじり開けた。
その時。
【ただいま、スタジオの室温は45℃です。これからさらに少しずつ上昇し、一時間後、最後まで我慢した組が次に進めます。なお、交代は1度きりとします】
私たち全員、喉を鳴らすことはなかった。
代わりに、スタジオ内の相棒を見る。
音楽が始まらないから動かないんじゃない。
動けないんだ。
喋るのも億劫だといった感じで、誰もが項垂れている。
熱に侵されているんだ。
こんな状況で水なんか__。
【どうぞ皆さんはお飲み下さい。ただし、水はその1本のみ。半分をパートナーに残しておくのも、全部、飲み干すのも皆さんの自由です】
あくまで、私たちが選択するというわけか。
それなら半分ずつじゃない?
半分を由加里に残しておいてあげれば、公平だ。
だから半分だけなら__。