足はもう大丈夫だからと言う由加里とバトンタッチをし、私はスタジオを出た。
空調が効いている。
地獄から天国に躍り出たようで、体を覆っていた熱が取れていく。
それぞれにタオルが配られ、汗を拭き取れるのも嬉しい。
ようやく息をつけるようになると、周りを見る余裕ができた。
今、私たちが居るのは、スタジオの脇だ。
そこから、中が見えるようになっている。
あれから音楽はかからず、中でパートナーたちがぐったりと座り込んでいるのが見えていた。
またレッスンが始まるのだろうか?
それならどうして、私たちは外に出たのだろう?
そんな素朴な疑問が吹き飛ぶほどの歓声が、瞬時に沸き起こった。
「えっ__?」
思わず受け取ると、手のひらから伝わる冷たさに、喉がごくりと鳴った。
冷たい水だ。
私が、いや、私たちが今、1番に欲しているものが与えられた。
ペットボトルの冷たい水。
手にしてはいけない宝物を手に入れてしまったかのように、私たちは静止する。
【お疲れさまでした。どうぞ、お飲み下さい】
そう言われても、半信半疑で手の中の水を見つめる。
だってそうじゃないか?
私だけが飲むの?
大切なパートナーを放っておいて?