「あ、ありがとう?」
お礼を言ったのに、なぜか疑問系で終わったのには訳がある。
私は間一髪のところで、転ばないですんだ。
腕を掴んで支えてくれたからだ__沢渡篤志が。
あの篤志が、だ。
だから「どうして?」の意味を込めてしまったが、それは疑い過ぎだろうか?
「こっちに転ばれて下敷きになっちゃ、たまったもんじゃないからな」
とは言うが、私が転んだところで巻き添えにしてしまうほど、距離は近くはなかった。
照れ隠しともとれる嫌味だが、とにかく助かったことには違いがない。
そして次の瞬間、音楽が止まった。
「うそ、終わった?」
「うそだったら困る」
さすがの篤志も、汗だくで笑っている。
交代してからずっと踊り続けていて、底無しの体力だが、やっぱりこたえているのか何度か深呼吸をして息を整えていた。
「由加里‼︎」
私は、パートナーに向かってピースサインを突き出す。
それに笑顔で応える、由加里。
足の痛みもかなり引いたようで、安心した。
この関門だけで、かなりの脱落者が出ている。
とりあえず次の関門までゆっくり休んで、少しでも体力を戻したい。
そう思うのは私だけじゃないはず。
それなのに__無慈悲なアナウンスが、私たちの希望を打ち砕く。