「ちょっと‼︎」
私が怒鳴ると、ようやく気怠そうに伸びをする。
「残り10秒」で前にやってくると、邪魔だというように足で小塚さんを小突いた。
「もうちょっと体力あると思ったがな?」と。
「信じられない‼︎」
「俺は、お前らがそこまで太った怠慢さが信じられないよ」
手首足首を回し、音楽に合わせて踊る篤志は、唯一、汗ひとつかいていない。
私は小塚さんに肩を貸し、後方に運ぶ。
水もなにもない。
タオルで__それも汗を吸った重たいタオルで顔を拭いてやることくらいしかできない。
それでも「ありがとう」と、笑顔を見せてくれた。
しばらく休んでいれば大丈夫だろう。
それより、一体いつ終わるのか?
すでに何組ものペアが力尽きて失格となっていた。
インターバルもなにもない、途切れることがない音楽が脳に響いてくる。
それに加え、この熱気だ。
いくら広々としたスタジオとはいえ、その空調を破壊してしまうほどの熱気がある。
室温が徐々に上がり始め、暑さが体力を奪い取っていた。
後ろで控えているほうも、汗が完全に引くことはない。
さほど体力を回復できないまま、交代となる。
あと何回、交代できるだろう?
乱れた呼吸を整えながら、私は願っていた。
音楽が途切れることを__。