【滴る汗】
もう3時間になる。
音楽は鳴り止まない。
そろそろ終わるんじゃないかと期待させ、また直ぐにリズムを刻み始めるんだ。
あえてスタジオに時計が設置されているのは、はっきりとした時間、つまり【絶望】を味あわせるためじゃないか?と、私は腹筋をしながら考えていた。
最早、起き上がることはできない。
そもそも腹筋や腕立てなんて、1回もできないのだから。
それでも止まらなければいい。
音楽についていけさえすれば、失格にならないで済む。
「小塚さん、しっかり」
この時はまだ、隣の小塚を励ます余裕があった。
非協力的なパートナーに恵まれたため、3時間、1人で踊り続けている。
この熊なような巨体に、そんな力が秘められていようとは。意外と体育会系なのだろうか?あの篤志が、なんの算段もなく小塚と組むわけがない。
しかし突然、小塚がばったりと倒れて動かなくなった。
「真帆、私が代わる‼︎」
気を利かせて、由加里が飛び出してくる。まださっき交代したばかりで、体力も戻っていないのに、だ。
私は小塚さんに駆け寄るが、呼び掛けにも応じない。
ストップウォッチを持ったスタッフが「残り30秒」と知らせる。
それでもあいつは動かない。