「私から行くわ」
相談するまでもなく、由加里が率先して立ち上がる。
恐らく、まだ体力が本調子でない私を気遣ってのことだろう。ここで押し問答しても仕方ないので、後ろで見守ることにした。
四方から集まった光が、筋肉隆々のトレーナーを作り出す。
ホログラフィーだ。
「アーユーレディー⁉︎」
陽気な英語とともに、軽快な音楽が流れ出す。
総勢30名ほどが、コーチに習って踊り出した。
普段、運動を敬遠しているデブのステップには目を覆うものがあるが、簡単な手足の動きに自然と慣れていく。
由加里は元々、運動部だったこともあり、しっかりついていっている。
左右に足を運びながら、手を大きく伸ばし、いくら少し痩せたとはいえ、巨漢がみんな同じ動きをしているのは、後ろから見ていても圧巻だった。
その場で足踏みをし、ジャンプをすると、床が揺れる。
すると、早くも交代する組が現れた。
息を切らしながら、後ろに控えていたペアと代わる。
交代は何度でも認められており、それぞれがそれぞれのタイミングで代わることができた。
それなら、難しいことはないんじゃないか?
片方は踊り、もう片方は座って休んでいるんだから。
ただ__。
これがいつまで続くかは知らされていない。
もし、ずっと続くなら?
ペアごと体力を奪い取るまで、終わらないのなら?