由加里は、私より2つ年上の21歳だった。
体重は【84kg】と同じだったこともあり、すぐ打ち解ける。
亜紀のこともあって積極的にはなれなかったが、やはり言葉を交わせる相手ができるのは、嬉しい。
「で、あんた名前は?」
「はーぁ⁉︎」
あさってのほうを向いて、どうやら答える気がないらしい。
私も別に知りたくもない。
でも由加里は、同じテーブル内で自己紹介をするよう提案した。せっかく知り合えたんだからという理由づけに、向かいに座る男は鼻で笑ったが。
「答えたくないならいいわ。うんこって呼ぶから」
「はぁ⁉︎」
「じゃ、うんこ年は?」
「お前、なめてんのか?」
「いや、うんこ舐めるとかあり得ないんですけど」
「沢渡(さわたり)‼︎」
「沢渡うんこ?」
「沢渡篤志(あつし)‼︎」
「沢渡さん、よろしく」
どうやら、由加里のほうが一枚上手らしい。
渋々といった様子だが、年が28歳であることと、プロボクサーであることを聞き出した。
どうりで痩せているわけだ。
「それでは皆さん、お食事にしましょうか」
女子というより、女史か女帝の合図でテーブルにコース料理が運ばれてくる。