「これ、めちゃうまい‼︎」
雅也が感嘆の声を上げる。
「そうでしょ?ここのお肉、美味しいんだ」
「てかこれ、牛?なんかちょっと食感が違う気するけど?」
「新しい動物みたい」
「えっ、なにそれ?象とか?」
「ふふ、そうかもね」
そう言って、私はステーキを一口、切り分けた。
フォークで刺し、丁寧に口に運ぶ。
芳しい香りが鼻腔をくすぐる。
それを存分に味わってから、口に含んだ。
味つけは、ない。
なんの味つけもしていないのに、ほんのり塩味と、噛めば噛むほどに濃くなっていく味が、体に浸透していく。
体だ。
心や脳だけじゃない。
体の細胞、1つ1つが喜んでいる。
新しい仲間を迎え入れることを、手放しで喜んでいた。
「美味しい」
ため息まじりに、声が漏れる。
「本当に美味そうに食うよな?それは昔っから変わってないな」
「だって、美味しいから」
更に一口、頬張った。
その一口をゆっくり食べ終わってから、顔を上げる。
「私はなにも変わってない」
と。
変わったのは雅也、あなたじゃない?
私はただ痩せただけ。