「もし、本気で痩せる気があるのなら、この中に入ること。入ったら最後、地獄が待っている。けれど入ったら間違いなく、痩せる。今とは見違えるくらいに」
その時、女と目が合った。
真っ直ぐ射抜くような視線に、金縛りにあったよう。
入ったら待っているのは地獄。
想像を絶するダイエットが待ち構えているのだろう。
でも__それを乗り越えれば、痩せる。
それも見違えるくらいに。
「そして、最後まで勝ち残った者には【1億円】を」
そのワードをきっかけに、男が中に入っていく。
私をデブだと笑った男。
皮肉にも、1番先に決意を固めたのが痩せたヤツでなんて。
それから、押し寄せる土砂のように建物内に吸い込まれていく、巨漢たち。
「行こうか?」
小塚さんが私を見て、促す。
一歩、踏み出すんだ。
大きな一歩を。
私を変えることができる、一歩。
中に入ると、ホテルのロビーのように天井が吹き抜けになっていた。
広いはずだが、私たちが押し寄せると狭く感じる。
スタッフの誘導についていくと__。
ばたん。
後ろの扉が閉まった。
大きな音を立てて。