【舌の味】


「ねぇ、彼女?よかったらお茶しない?」


「ちょっといいかな?モデルさん?女優さんとか?」


「うわっ、マジで一目惚れ。俺と付き合わない?」


私の前には、長蛇の列ができていた。


入れ替わり立ち替わり、男たちが求愛しにくる。


「待ち合わせなんで」


少し微笑んで断るも__。


「こんな美女を待たせるような彼氏、別れちゃえ」


「グラビアとかどうかな?君ならすぐにトップだよ」


「俺のほうが大事にするから」


微笑は、男たちを更に焚き付けてしまう。


どれだけ目立たず、俯いていたとしても、男は寄ってくる。


蝿のように。


私から流れ出る蜜に群がるんだ。


どれだけ目立たず、俯いていたとしても、男は私をあざ笑うだけだったのに。


天地がひっくり返ったとは、このこと。


ダイエットに成功した私は、美しく生まれ変わった。


元々、背丈はあったため、くびれのあるモデル体型となり、僅かに生じた【自信】が見る見るうちに私を変えた。


今や、街を歩けば誰もが振り向く。


これまで誰にも見向きもされなかった私は、胸を張って歩いた。


その価値が、私にはあるのだから。