「由加里⁉︎」
慌てて体を起こそうとしたが、離してくれない。
それどころか、私に抱き着くように体を密着させてくる。
刃が、さらに深く食い込んでいく__。
「だめ、由加里!離して‼︎」
手を引き抜こうにも、がっちり掴まれている。
私は刺すつもりなんてなかった。
そしてそれは、由加里も分かっていた。どれだけ【殺して?】と願っても、それは叶わぬ夢だということ。
私には、由加里は殺せない。
だから自分から__。
「離したら、また真帆を襲っちゃうでしょ?」
声は震えていたが、どこか茶目っ気が含まれていた。
獣でなくなったんだ。
それは、命が尽きるから?
「許してね、真帆」
「由加里__」
「真帆は、生きて」
「由加里も一緒に!」
「ううん」
静かに首を振る。
その顔色は真っ白だった。
「私はもう__だめ。だから真帆は、生きなきゃ」
「お願い、1人にしないで」
「真帆なら大丈夫」
それだけ言うと、顔を背けて咳き込んだ。
多量の血が散らばる。
「約束通り、1億円は半分ずつ__ね?」
優しく微笑むと、ゆっくり倒れ込んでくる。
ゆっくりと。