とても人間じゃない跳躍力で跳び上がった由加里が、空から降ってくる。


唖然と見上げる私は、避ける間もなかった。


肩に伸し掛かるようにして倒され、頭を強く打った。


ぐらりと視界か揺れる。


__ん?


なにかが、私の手を包む。


暖かな温もりが、手を包み込んだ。


「がぁああああああ‼︎」


覆いかぶさる形で身動きを封じられた私の上に、多量のよだれが滴り落ちてくる。


肉だ。


とうとう、獣が肉を仕留めたと、その欲望まで垂れ流しになる。


獣化した由加里が肉を喰らい尽くそうと、真っ赤な歯肉を剥き出しにして迫ってきた‼︎


た、食べられる⁉︎


しかし、由加里は動きを止めた。


また自分を取り戻したのか?


私だと気づいて、踏みとどまったのだろうか?


でもそれだとまた__同じことになる。永遠に、抜け出すことができないループ。どちらかが【肉】になることで打ち破れるはずだったのに__?


「真、帆?」


やっぱり、元に戻ったんだ。


それもたったの一瞬だというのに。


「由加里?」


「真帆、ごめんね」


そう言って、力なく笑った。


初めて笑顔を見せてくれたんだ。


口から、血を流しながら__。