「由加里__?」
「こ、来ないで‼︎」
「私__」
「来るな!これ以上、私に近づくな‼︎」
壁に張り付いて、私から逃げ惑う。
私のほうが獣であるかのように。
「た、食べてしまう、た、た、食べてしまうから」
怯えるように首を振る。
「それでいいのよ。私を食べればいい。それで終わりにしよう」
「嫌‼︎」
「もう、終わりにしよう。私は由加里に食べられるならいいよ」
「嫌‼︎いやいやいやいやいや!」
「由加里、お願い」
「うるさい‼︎」
どんっと突き飛ばされ、獣が馬乗りに。
今度こそ終わる。
今度こそ__。
咆哮を上げながら、よだれが垂れ落ちる口が顔に迫ってくる。
きつく目を閉じた私は、よだれが頬に滴るのを感じた。
けれど何も起きない。
獣特有の唸り声も、聞こえない。
恐る恐る瞼を開けると、目の前に由加里が居た。
私の手にはさみを握らせ、自分の喉元に突き刺している。
「お願い、殺して」
「だめ」
「殺してよ‼︎」
「だめ!」
「殺さないなら、食べちゃうから!真帆のこと、食べてしまうから!」
「由加里__」
「早くっ、あぁああ‼︎早くしないと、今のうちに!」
グッと力を込めた手が、はさみを突き立てる。
その刃先が、喉元に食い込んでいく__。