【お願い、殺して?】


「ま、真帆?私、わ、わ、私なにを__?」


震えた声で言った後、由加里は両手で顔を覆って泣き出した。


ごめんなさい、と。


許して、と。


悲しい泣き声だったが、その声は由加里のものだ。


私は立ち上がった。


時折、気絶しそうな痛みに襲われるが、なにより由加里が自分を取り戻したことのほうが嬉しい。


「私なら大丈夫だから」


そう言って肩に手を触れた瞬間、由加里が飛び掛かってきた!


押し倒されて、大きな口を開けた獣が喉元を噛み潰そうと__。


私に馬乗りになり、今にも噛み付かんとしていた獣は再び泣き出した。


鳴いたのでも啼いたのでもない。


泣いている。


「真帆__?」と。


「由加里?」


体を起こそうとしたが、三たび唸りだした由加里を思わず突き飛ばす。


目まぐるしく【主】を入れ替えては、私に襲いかかる自分を食い止めているんだ。


指を食べたことによって、抑えが効かなくなっている。


そう、それが狙いだ。


由加里を苦しみから解放するのが、目的なのだから。


しかし、顔を覗かせる由加里は泣いている。


泣いて私の名を呼ぶ。


何度も、何度も。


そして言った。