熱い痛みが走る。
その瞬間、眠っていた由加里が起き上がった。
ほぼ反射的に、私の指に噛みつく。
「あぁああああー‼︎」
指を、咬みちぎられた。
噴き出す血が、由加里を赤く染める。
指をおさえて蹲る私は、叫び続けた。叫ばずにはいられなかった。
あまりの痛みに気を失いそうだが、それならそれでいい。
知らぬ間に食べられるなら、本望だ。
指だけでこれだけの痛みだ。できるだけ一思いに喉にでも噛みついてほしい。
一瞬で終わらせてほしい。
それが今、唯一の望みだ。
私には、由加里は殺せない。
きっと反対の立場だったとしても、由加里は同じことをするはず。
抑制する【獣】を呼び起こすには、血を流すしかない。
これでいい。
これで。
だから早く、早くこの痛みから解放して__?
顔を見上げた私は、由加里とはっきりと目が合ったのが分かった。
くちゃくちゃと指を咀嚼している、その目が次第に見開かれていく。
口の動きが止まった。
「ごっ‼︎」
指を吐き出し、激しくえずく。
それはそれで聞くに耐えないが、それは由加里の音。
咳き込む音も、ツバを吐き出す音も、泣き声さえも。