歩くことも覚束ない足で、立ち上がる。
散々、暴れた由加里は壁に衝突して、気を失った。
まだ戦っているんだ。
自分を手放さないよう、由加里も戦っている。
でも__もう、どうにもならない。
どれだけ痛めつけても、なにも解決はしない。どちらかが太らない限り、どちらかが、居なくならない限りは何をしても同じこと。
喉が渇いた。
飲み込むツバすらない。
尋常ではない飢えで、身体中が痺れている。
立ちはだかる絶望は、理性を蝕んでいくには充分だった。
「由加里」
眠っている顔は、とても健やかだ。
一瞬だが、私の決意が鈍る。
でもすぐ、目を覚ました由加里は体を掻き毟り、聞くに耐えない叫び声を上げるんだ。
化け物に変身するかのように。
だからね、由加里。
私が、楽にしてあげる。
終わりにしてあげるから。
枕元に、ゆっくり膝をついた。
はさみが、光っている。
初めから私の手に張り付いていたようで__。
「ごめんね」
許してね。
きっと怒るだろう。
私のよく知っている由加里なら、怒るはずだ。
でも、こうするしかないの。
そう言い聞かせ、私ははさみを開いた。