【このデブども‼︎】
ま、まだか⁉︎
あれからずっと、山を登り続けている。
多くの脱落していくデブを横目に、私は登ったんだ。
怒りに引っ張られ、励ましに背を押されて。
すると突然、視界がひらけた。
そこにそびえ立つのは、山間には不釣り合いなホテルのような建物が。いきなり近代的になるが、そんなこととは別で、参加者はみんな地べたに座り込む。
「みなさん、お疲れ様でした」
ホテルの入り口から、女性の優しい声が聞こえる。
滝のような汗がようやくおさまると、顔を上げた。
スラリとした黒ずくめの女性が立っている。
「ここまで大変だったでしょう。早く建物にお入り下さい。冷たいお水と、昼食をご用意していますから」
天使のような言葉に、愚民ならぬ愚デブは一斉に立ち上がった。
餌に釣られる河豚のようではあるけれど、水や飯だと言われたら動けるのが、デブの真髄である。
先ほどまでの亡霊の歩みとは打って変わり、我先にと入り口に押し寄せる、集団。
女性の顔が見えるくらいまで近くなると、おもむろに拡声器を口に当てた。
なんだか、嫌な予感がする?
私は足を止めた。