久しぶりに耳にする人の声に、心が踊る。
やっとここから出ることができる。
ずっと止まっていた時計の針が動いたんだ。
たとえそれが、どちらか1人だけだとしても。
何か手があるはずだ。
2人して協力すればいい、あの時みたいに__。
「由加里?」
床に丸くなって蹲っている、かつてのパートナーは唸り声を上げて震えていた。
ダメだ。
私がなんとかしないと__。
決勝戦もダイエット対決。
けれど、先に5kg太ったほうが優勝?
痩せるんじゃなく、太る?
なにかの冗談だと思った。痩せることは可能だ。ずっと何も飲み食いしていない。何もしなくても体重は減っていくだろう。
でも太るって⁇
それはなにかを食べないことには無理じゃないか?
辺りを見回す。
なにもない。
私と由加里と、私がここに持ち込んだハサミが一本。
ただそれだけだ。
食べるものなんてなにも__?
その時、ふと由加里と目が合った。
由加里は、私を見つめている。
その目は血走り、怒りが滾(たぎ)っているように見えた。
そうか、食べるものならあるんだ。
目の前に。