ようやく震えが止まった。


「由加里、覚えてる?ここで私と出会って、一緒にダイエットをしたの」


記憶を呼び覚まそうと試みるも、ムダだった。


きまって頭が痛いと呻き出す。


それでも薄っすら私のことは覚えているのか、腕にしがみついて離してくれない。


仕方ないので、由加里を連れたまま部屋を探る。


やはり、どこにも出入口はない。


それともまた、水が流れてきて天井が開くのか?


そして__助かるのは、私か由加里のどちらか1人。


そう、勝ったほうが【1億円】を手にできる。


どうでもいい。


お金なんて、どうでもいい。


由加里と2人、ここから抜け出すことができればそれでいいんだ。


もう、争うことはしたくない。


1番、大切な人と争うなんて__。


「ダメだ」


諦めて床に座り込む。


どれだけ時間が経っただろう?


いつもなら、すぐ対戦が始まるはず。


【太田真帆vs村上由加里】というアナウンスも、随分と前に流れたっきりだ。


どうして始まらないのか?


こんなところに2人、閉じ込められたままじゃ__。


しかし、いつまで経っても決勝戦は始まらなかった。