その目に、はっきり私が写っている。


「由加里?私が分かるの⁉︎」


「__真帆、でしょ?」


「そうよ‼︎良かった、元に戻ったんだ!」


「私、一体__?」


ぼんやりと口にし、辺りを見回す。


何も覚えていないんだ。


何も。


「ここから出ないと。なんとかして」


そう言って私も見回すが、この部屋にはどこにも出入口がない。


下の部屋への蓋は開けられない。


窓1つない、密室だ。


「出口を探してくる」


立ち上がろうとした私を「行かないで‼︎」と、腰にしかみついて引き止める由加里。


きょろきょろと辺りを警戒し、なにかに怯えている?


「でも、ここから出ないと」


「お、お願い‼︎お願いだから!」


決して腰を離そうとしない由加里は、涙を流して訴える。


怖いのかもしれない。


また、自分を失くすことが。


「わかった。後で一緒に探そう」


優しく言って、座り直す。


今は、由加里の側に居るべきだ。


抱き締めて話しかける、話し続ける必要がある。


由加里が由加里であり続けられるように__。


獣に、戻ってしまわないように。