篤志だ。


篤志が後ろから鎖で首を絞め、羽交い締めにしている。


「行け‼︎」


声にはならなくとも、その厳しい表情で分かった。


躊躇うことなく、私ははしごを登る。


一瞬の躊躇が命取りになるからだ。


ここは篤志を信じよう。


絶対に私の次に助かるはず。


今はこの蓋を__開いた‼︎


肩で押し出すようにして持ち上げ、私は出口から出ることに成功した。


大きく息を吸い込む。


咳をするたびに胸が鋭く痛んだが、今はそれどころじゃない。


【太田真帆さん、勝ち抜けです。残りは1名】


そう、あと1人。


獣になった由加里と、愛を履き違えている小塚さん、そして私を先に逃がしてくれた、篤志。


身を投げ打って、守ってくれた。


今度は私が__。


再び水の中に顔を突っ込んだが、流れが早くてよく見えない。


行き場をなくした水が渦を巻いていて、体を切り刻まれてしまいそうだ。


もう限界なはず。


この中で唯一、人である篤志の呼吸はとうに限界を越えている。


早くしないと。


出口の側で、今か今かと祈るように待ち構える。


お願い、出てきて。


お願い__。