水が、私の心も濡らしていく。


こんなことをしている場合じゃない。


今、篤志と由加里は自由だ。私と小塚さんは、まだ拘束が解けていない。この状況下で1kg痩せるなんてことは、不可能。泳いで痩せろとでもいうのか?


太ももを撫でていく水は、どす黒く染まっている。


アキの血だ。


時折、アキであった欠けらが流れていくこともある。


この密室の中は、異様な血生臭さで埋め尽くされており、少しでも気を抜くと発狂しそうだ。


「真帆ちゃん!そいつを始末するんだ‼︎」


「小塚、さん__?」


「そいつを逃すと、僕たちが死ぬことになる」


振り返った小塚さんが、真っ直ぐに篤志を指差す。


「お前に俺が刺せるのか?」


凄みを効かせる篤志が、じわじわとはしごへの距離を縮めていく。


「真帆ちゃん‼︎早く!」


「刺さるもんなら刺してみろ‼︎」


2人の間で揺れ動いていた振り子は、あまりに揺れ過ぎて__。


2人が、同時に飛びかかってくる。


刺されまいとする篤志と、なかなか踏ん切りがつかない私からハサミを奪い取ろうとする小塚さん。


私は、叫び声を上げながらハサミを振り下ろした。