「__小塚さん?」


目の前の、私が信じ切っていた人は、わずかに首を傾げていた。


「はなっからおかしいと思ってた。太ってるわりには身体能力が高い。指名戦での傘もそうだ。こいつは知ってる、1度、体験してるからだ」


その向こうで篤志が、確信を込めて言った。


小塚さんが裏切り者__つまり、前回の優勝者だと。


この大会に向けて、わざと太った?


「ほ、本当なの?小塚さん、なんとか言って」


ずっと私を騙していたのか?


優しい振りをして近づいた?


なんのために?


たくさんの疑問が沸き起こってくるが、それでもまだ私は信じられなかった。


ううん、信じたかった。


この人の優しさは、偽りなんかじゃないと__。


「真帆ちゃん、こんな奴の言うことを信じるの?」


「それは__」


「こいつは自分勝手で非協力的で、いつも僕たちの輪を乱してきたじゃないか?神に誓って言うよ、僕は嘘なんか言っちゃいない」


いつもの、愛くるしい熊さんの微笑みを浮かべる。


それを見るだけで、私のざわついた心は落ち着く。


「騙されんな‼︎」


再び、篤志が私の心をかき乱す。


一体、どっちが本当のことを言ってるの?