じりじりと、壁を背にしてはしごに近づいていく篤志。


警戒しているのは、由加里だろう。


しかしその由加里は、食事に夢中だ。


このままいけば、篤志ははしごを登ってここから抜け出す。


決勝に進むんだ。


前回そうしたように__?


「なんだお前?」


篤志が睨みつけてくる。


前に立ちはだかった、私を。


両手で握りしめたハサミを突き出す、私を。


「そんな物騒なもん、誰に貰ったんだ?まぁ、だいたい検討はつくがな」


と、少し離れている小塚さんをチラ見する。


私を守ると言ってくれた小塚さんが、お守りだと手渡してくれたんだ。


1kg痩せることができないなら__周りを潰すしかない。


そんなこと私には無理だと思ったが、アキが由加里にやられた。


由加里も、いつ襲いかかってくるか分からない。


「お前はそんな卑怯なヤツだと思わなかったがな」


「あ、あんたには言われたくない‼︎」


「俺が卑怯だと?」


篤志が眉を寄せる。


だから私は叫んだんだ。


「だって、前回の優勝者じゃない‼︎」


と。


目を見開いて驚いているのが、その証拠だ。


やっぱりこいつは、前回のチャンピオン。それなら一層、はしごに登らせるわけにはいかない。


私はハサミを持つ手に、力を込めた。