「いゃやああああああ‼︎」
もがいていたアキが、すぐに静かになった。
動かなくなった。
ひざ下まで水がせり上がってきている、その中で、由加里だけが不気味に埋もれている。
アキ自身に、何度も何度も噛みついていた。
「食べて__る?」
誰にともなく問いかけたが、明らかだ。
由加里は、アキを食べている。
北山の喉元を喰らった時のように。
きっと、アキが吐血したからだ。北山も指を切った。
それまで全てに対して無反応だった由加里は、人の血に反応する。
鉄臭い匂いなのか、びくんと体を震わせ、喰らいつくんだ。
なぜか拘束も取れていた。
1kg痩せない限り、人の力では解けない鎖を引きちぎったのだろう。
人の力では解けない鎖。
それなら由加里は一体、なんだというの?
人を食べる由加里は、化け物なのか?
かちゃり。
そんな音に振り返る。
ようやく、惨たらしい食事風景から目をそらすことができた。
そこに、篤志が立っている。
拘束を解いた、沢渡篤志が。
アキと同じように、先ほど食べた物を吐き出して1kg痩せたんだ。
水は、私の膝を超えていく。