はしごがある。
すでに水は足首まで水位を上げており、鎖から解放されたアキは水を跳ね上げながら、はしごに飛びついた。
あとは一気に登るだけだ。
決勝のひと枠は南アキに決まった__誰もがそう思った。
もうひと登りすれば終わりなのだから。
しかしアキは、はしごを掴んだまま咳き込んだ。
無理に吐き出したからかもしれない。指名戦での3kg分と、今回の1kg分、体は相当な負担がかかっているはず。
胃が悲鳴を上げても無理はない。
体を折り曲げて咳をしていたアキは、呆然と自分の手のひらを見下ろす。
血だ。
血が出ている。
顔をしかめたアキだったが、直ぐにはしごを登り始めた。
ここから抜け出せば、1億円にグッと近づく。
血は吐いたものの、どこか笑みが漏れている横顔を私は眺めていた。
はしごを登りきり、出口に手がかかる。
その時。
アキがはしごから落下した。
一瞬、なにが起こったのか分からなかったが、再び水の中に舞い戻る。
由加里とともに__。
由加里が、アキに飛びついたんだ。
はしごの最上階、ほぼ天井に居たアキの背中に、ひとっ飛びでしがみついた。
その首に噛みつきながら。