がたがたと激しく痙攣する北山がやがて、首(こうべ)を垂れた。


噛みちぎった喉から、滝のような血が流れる。


口周りを真っ赤に染めて、由加里は咀嚼していた。


肉を。


人肉を噛んでいる。


これまで無に等しかった表情に、僅かな明かりが灯る。


あれは__悦びだ。


極上の肉を喰らって思わずこぼれた、微笑みだった。


真横に崩れ落ちていく北山を強引に引っ掴むと、同じところに噛みつく。


今度は深く、顔が埋もれるくらいに__。


左手は肩に、右手は北山の髪の毛をぞんざいに掴み、
由加里は力任せに___引き裂いた。


首が、転がっていく。


なんて力だろう?


胴体にかぶりつく由加里はもう、由加里じゃない。


人を食べるなんて__。


くちゃくちゃ。


くちゃくちゃ。


聞こえてくる。


ガムを噛むように、味のしなくなったガムをいつまでも味わうように、口だけが機械的に動く。


くちゃくちゃ。


くちゃくちゃ。


由加里の口が動いている。


肉を食べて、血を啜っていた。


恍惚の笑みを浮かべて。


そして私は、気を失った。


それなのに、聞こえてくる。


由加里が肉を味わう音が__。