北山が指を切った瞬間、それはつまり血が流れた瞬間だ。


誰の言葉にも反応しなかった由加里が、我に返った?


でも、でも__。


「由加里、逃げて‼︎」


私は叫んだ。


いくら襲ってくる相手に気づいたといっても、拘束されている。


今からのこぎりで、腰の拘束を斬り落としても間に合わない。


「死ね‼︎」


のこぎりを持った北山が、由加里の脳天に向かって振り下ろす。


「由加里‼︎」


名前を呼んだと同時に、私は目を閉じた。


きつく閉じたんだ。


心を解り合えた友が死ぬのを、見たくなかったから。


せっかく知り合えたのに。


同じ目的に向かって協力し、喜びを分かち合うことができたのに。


再会を約束し、再び出会うことができたのに。


それなのに__。


「ま、ま、真帆ちゃん」


震えた小塚さんの声が、全てを物語っているじゃないか。


無残にのこぎりで切り刻まれたんだ。


「あぁああああー‼︎」


この世のものとは思えない悲鳴が__?


悲鳴?


今、聞こえてくるのは、由加里じゃない。


「真帆ちゃん、目を開けて」


「で、でも__」


「真帆ちゃん」


肩を揺すられ、私はゆっくり目を開けた。