「まさか、由加里を?」


「そうかもしれない。あいつは斧で__」


そう言葉を濁すのは、私を不安にしないためか?


あの場面が蘇る。


斧を手に、次々に同じチームの仲間を斬殺していった北山竜一。


返り血を浴びて、鬼のような顔で箱から出てきた奴は今、あの時と同じ顔をしていた。


狩るものの目。


丸太をのこぎりで切らなくても、相手を切ればすむ話だ。


手っ取り早く由加里を殺してしまえば、それで終わる。


「由加里‼︎に、逃げて!」


中に飛び込もうとしたが、スタッフに止められた。


由加里は、ぼんやりと見ている。


ゆっくりと、ほくそ笑んで向かってくる北山竜一を。


腰を縛りつけられているため、逃げることもできない。


このままじゃ、由加里は__。


「真帆ちゃん、落ち着いて」


「こんな時に落ち着けない‼︎由加里が殺されようとしてるのに⁉︎」


「いや、でも由加里ちゃんは気づいている」


「えっ?」


「相手をちゃんと認識している」


「どういう、こと?」


「少し前から、北山のことを見ていた。北山が拘束を解く前から」


「解く前?」


「ああ。北山が指を切った瞬間にね」